出典: https://www.centforce.com/profile/t_profile/kobayashimao.html
2016年6月9日に歌舞伎俳優の市川海老蔵の妻、小林麻央さんが進行性乳がんであることがメディアで報道され、海老蔵さんが会見を開いたのは最近のニュースの中でも印象的だった人も多いのではないでしょうか。
女性であれば、一度は「自分が乳がんになったら」と考えたことがあるはず。日本人女性の14人に1人は乳がんを発症する時代です。親戚や友人など身近な人にも乳がんになったことのある人、一人はいるのではないでしょうか?
会見では進行性の乳がんと発表されましたが、そもそも進行性ってどういう状態をいうのでしょうか。進行性乳がんになった時の余命や生存率、手術の予後などについてみていきましょう。
がんの病状=ステージ
「がん」には病状を表す基準「ステージ」というものがあり、がんの大きさや他への転移があるかなどで0~Ⅳまでに分けられます。
ステージ0・・・がん細胞が粘膜内に留まっていて、他の部位への転移はない
ステージⅠ・・・がん細胞が少し広がっているが、筋肉の層で留まっている。他の部位への転移はない。
ステージⅡ・・・リンパ節には転移していないが、筋肉の層を越えて広がり始めている。もしくは、がん細胞は広がっていないが、リンパ節へ少し転移している。
ステージⅢ・・・がん細胞が広がってきて、リンパ節への転移がはっきりとわかる。
ステージⅣ・・・初めにがんができた所と離れた臓器への転移がある。
進行性がんは、早期がんと比較される状態で、がん細胞が広がってきて、リンパ節や他の臓器への転移が見られる状態の事をいいます。ステージでいうとⅢ以上が進行性がんになります。
進行性の乳がんって?
進行性の乳がんとは、普通の乳がんが進行して「局部がんのステージⅢ」か「転移性がんのステージⅣ」の事をいいます。
局部がんのステージⅢ・・・乳房の広い範囲、また脇のリンパ節への転移がある。
転移性がんのステージⅣ・・乳房とは離れた臓器や骨などに転移している。
乳がんはどんな症状がでるの?
初期症状
・しこり
乳房や脇の下にしこりができます。(がんができた場所によって、しこりとして現れにくい場合があります。)
・皮膚に異常がみられる
- 皮膚にひきつり、えくぼのような凹みができる
- 乳頭や乳房の皮膚に炎症や赤みがある。
・乳頭からの分泌液
乳頭から血の混ざったような赤褐色の分泌液が出る。(乳腺症などの場合、乳白色の分泌液が出ますから、分泌液が出たら色をチェックしてください。)
乳がんが進行したら・・・
進行性の乳がんの場合、乳房内のがん細胞が広がり、リンパ節や他の臓器への転移がありますので、下記のような症状が現れる場合があります。
・乳房が痛む
乳がんの初期の場合はほとんど痛みが出ません。ある程度進行してくると痛みが出ることがあります。痛みが長期間続く場合や、片方の乳房だけ痛む場合は乳がんの可能性があります。
・脇の下が腫れる、腕がむくむ、しびれる
乳房は脇の下のリンパ節に近いため、リンパ節に転移しやすいです。脇の下のリンパ節に転移した場合、脇が腫れる、リンパ節の腫れによって圧迫され腕にむくみが出たり、しびれが出ることがあります。
・他の臓器が痛んだり、息苦しくなる
他の臓器へ転移がみられる場合、その部位での症状が出ます。
骨へ転移した場合、肩や腰などが痛んだり骨折することもあります。肺へ転移した場合は、咳が出たり息が苦しくなったりします。膵臓や肝臓は早期発見が難しい臓器のため、自覚症状が出るころには、かなり進行している事が多いです。
・進行しても自覚症状が出ない場合も
乳がんは末期と診断されても痛みなどの自覚症状が出ない場合もあります。気付いたころには余命わずかとなっているかもしれません。
乳がんを早期発見するには、しこりを見つけるためのセルフチェックと、定期健診を受けることが大切です。
進行性乳がんの原因
・エストロゲンの影響
女性ホルモンであるエストロゲンが分泌される時期が長い程、乳がんになりやすいと言われています。
初潮年齢が早いと閉経が遅くなる傾向があります。
また、妊娠、出産、授乳している間はエストロゲンの分泌が抑えられるので、妊娠、出産経験のない人は乳がん発症のリスクが増えます。
出産年齢の高齢化も関係しているようです。10~20代はエストロゲンの分泌が多いため、この時期に妊娠、出産を経験していると、エストロゲンの影響を受けにくくなります。
・肥満
女性ホルモンの分泌に脂肪細胞が関係しているので、肥満の女性は乳がんになりやすいといわれています。
・血縁者に「がん」を発症した人がいる
一親等以内に乳がんや卵巣がんを発症した人がいると、乳がんになる可能性が上がるようです。
初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産歴がない、初産年齢が遅い、授乳歴がないことがリスク要因とされています。
◆進行性乳がんの余命・生存率・予後について
※1 予後とは、投薬や手術などを行った場合にどのような経過をたどるか予測して見通しを立てることを意味する医療用語
進行性乳がんになった場合、余命や生存率はどうなるのでしょうか。また、予後(※1)についてまとめてみました。
局部がんのステージⅢ・・・5年後の生存率は72%、10年後の生存率はⅢaの場合59%、a期は手術が可能です。
Ⅲb の場合5年後の生存率は43%、10年後の生存率は52% です。b期は抗がん剤治療が主で、その経過が良ければ手術することが可能です。抗がん剤治療が成功しないと、手術できないため、a期に比べて生存率が下がっています。
転移性がんのステージⅣ・・5年後の生存率は43%、10年後の生存率は25%です。転移性のがんは抗がん剤の治療で一時的にがんを縮小することはできても、完治することは難しくなるため、通常の乳がんよりも余命は短くなります。
進行性乳がんの治療法
進行性乳がんの治療は、がんのステージによって違います。
・局部がんステージⅢa期
全乳房切除術・・・乳管内に広範囲にがん細胞が広がっている場合は、乳房のみを摘出する手術を行う。乳頭や乳輪を残しつつ乳腺を全摘出する場合もある。術後は抗がん剤治療、ホルモン療法を行います。
温存療法・・・がん細胞とその周囲の正常な細胞を部分的に摘出する手術。胸筋や摘出する部位以外は残すため、乳房の変形が少なくて済みます。術後は抗がん剤治療、ホルモン療法に加え、放射線治療も行います。
ちなみに、今の医療では乳房を全摘出するのと、温存療法に放射線治療を加えたものでの、長期的な生存率に大きな差がないとされています。なので、乳房を全部取ってしまった方が良いという訳ではないのです。
・局部がんステージⅢb期
Ⅲb期は薬物治療が基本です。抗がん剤治療やホルモン療法によってがん細胞が小さくなれば、手術することもできます。
・転移性がんステージⅣ
ステージⅣになると、完治を目指すのではなく、進行を遅らせて余命を延ばしたり、痛みなどの症状を軽くするための治療が行われます。抗がん剤治療やホルモン療法、放射線治療とともに苦痛の軽減のため、鎮痛薬のモルヒネを使うこともあります。
乳がんは早期発見が大事!
乳房にしこりがあったからといって全てが乳がんという訳ではありません。しこりが見つかって検査を受けてみると、「がん」とは全く違う乳腺症という病気の場合がほとんどです。
また、乳がんのステージⅠで発見した場合、生存率はなんと99パーセント!進行性乳がんになる前の早期の内に発見することが完治への近道になります。
早期発見にはセルフチェックと、乳がん検診を定期的に受けること。乳がん検診は20歳を過ぎたら、最低でも2年に一度は受けるようにしましょう。